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Ag+シャワーの開発

水力発電装置を内蔵した
今までにないシャワーを

自社ブランド「if」で次々と斬新なシャワーヘッドを発売してきたフクシマ化学。
新たな挑戦として選んだのは、水の力を利用してシャワーヘッド自体で電気をつくるというこれまでになかった発想でした。
試行錯誤を繰り返してきた開発秘話を紹介します。

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発電技術でLED光によるフォトセラピーシャワーを開発

フクシマ化学では、2016年にシャワーヘッドに発電装置を内蔵させることで、水が流れた際にシャワーヘッド内で電気をつくることができる技術を開発。その技術をいかして、LEDの光を肌や頭皮に照射し、自宅でフォトセラピー(※)が体感できるシャワーヘッド「linno BEAU(リーノビュー)」を発売しました。linno BEAUは、筋肉層まで到達する近赤外線LED、細胞の活性化を促し、炎症や皮膚老化の改善につなげる赤色LED、アクネ菌を滅菌し、過剰な皮脂分泌を抑制する青色LEDと、3種のLED光を照射可能。散水域を絞って水密度を高めることで、省エネ設計を実現し、シャワー内部の水流だけで発電するため、ランニングコストも必要ない点も、注目を集めました。

発電技術でLED光によるフォトセラピーシャワーを開発

しかしそれまでの道のりは、決して簡単なものではありませんでした。開発に携わったフクシマ化学の翁坂耕二常務取締役は「これまでの経験や技術はまったく通用しませんでした。電気に関する研究機関を訪ねて知見を聞いたり、水の流し方や回転数を研究したりして、最も効率的に回転するプロペラ形状を模索するなど、途方もない数のトライ&エラーを重ねました」と、当時を振り返ります。その努力の結果、流水の圧力エネルギーで水車を回転させるフランシス水車にヒントを得て、現在の技術が確立。Linno BEAUの発売にこぎつけることができました。

※フォトセラピー/複数の波長を持ち、肌の深層部まで届くLEDの光を当てることで、肌が本来持っている再生力に働きかけるもの。

「発電技術を何に役立てるか」コロナ禍で至った答え

linno BEAUで発電技術に秘められた可能性を実感したフクシマ化学は、この技術を幅広い製品に応用できるよう、水力発電装置の小型化に着手。小型化とともに、発電機能を持つシャワーヘッドで「何を実現するのか」を考え始めます。
そんな中、2019年頃から新型コロナウイルス感染症が流行。コロナ禍が続く中で自宅でも「抗菌」や「殺菌」の必要性が増していきました。そこでフクシマ化学は、発電した電気で水を分解し、銀イオン(Ag+)を発生させることはできないかと考えました。Ag+には抗菌効果があるとされており、毎日の入浴や掃除にAg+を含む水を使えば、食中毒や皮膚疾患の原因菌といわれる「黄色ブドウ球菌」やニオイの元になる「モラクセラ菌」、「黒カビ」などをの発生を抑えることができます。こうした想いから、Ag+を発生させるシャワーヘッド「Ag+シャワー」の開発がスタートしました。

発電装置の小型化に成功し、Ag+シャワーが完成

独自の技術で小型化に成功した水力発電装置を内蔵したAg+シャワー。シャワー内に水が流れることで生み出される電気で銀イオンを生み出すため、電源を使用することなく浴室内で使うことができます。Ag+を生み出すのは、シャワーヘッド内にある2枚の純銀プレート。水と電気がこの2枚のプレートの間を通ると、銀が電気分解されて水に溶け込む仕組みです。

発電のしくみ

電気分解されることで消耗していく純銀プレートは、交換時期になるとLEDランプが灯り、簡単に交換が可能。また、スイッチで電気分解のオン/オフを切り替えることもできるため、必要な時以外にはスイッチをオフにして、プレートの消耗を抑えることもできます。このAg+シャワーは、発売けてクラウドファンディングを実施したところ、多くの反響があり、約70名もの賛同を得ることができました。

Ag⁺発電のしくみ

失敗は販売に向けたさらなる向上へのステップ

クラウドファンディングによる支援を受けて完成したAg+シャワーは、そのお礼としてまずは応援者の元へ送られました。しかし、使用した方から寄せられたのは、「スイッチ部分でAg+が発生したことを知らせるランプがつかない」という報告でした。「原因を追究していくと、コードの配線や水を通さないように樹脂でコーティングするポッティング加工の方法など、多くの課題が見つかりました。今は回路設計を見直し、スイッチ部分の改良に取り組んでいます」と話す翁坂常務。その改良過程では、自社の技術が十分でない点もあらためて把握することができ、すべてを自社だけで行うのではなく、さらなる安全性を求めてスイッチの製造は電子機器の企画を行うメーカーに委託するなど、ブラッシュアップを図ることができたといいます。

失敗は販売に向けたさらなる向上へのステップ

「失敗した時は、課題が山積みで途方にくれましたが、そのおかげで完成度を高めることができると感じています。このトライ&エラーの先に達成感があるという実体験が、モノづくりの醍醐味なんだと思います」と、翁坂常務は笑顔を見せます。現在、Ag+シャワーは完成までの最終段階を迎えており、満を持しての発売が待ち望まれています。

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