TECH ACTION #1
水力発電装置を内蔵した
「Ag+シャワー」
水は、ただ流れるだけなのか。
前例のない挑戦へ。
2016年、わたしたちは、ひとつの問いから開発をはじめました。
水は、ただ流れるだけなのか ——
もし、毎日何気なく浴びているシャワーの水から電気を生みだすことができたら。
その発想は、シャワーヘッドの内部に発電装置を組みこむという、前例のない挑戦へと姿を変えていきました。
水が流れる。その力で電気をつくる。生まれた電力でLEDを灯し、肌や頭皮にやさしい光を届ける。
こうして自宅でフォトセラピー(※)を体感できるシャワーヘッド「linno BEAU」(リーノビュー)の構想が動きだしました。
近赤外線LEDは筋肉層にまで届き、細胞の活性化を促す。
赤色LEDは炎症や皮膚老化の改善へ。
青色LEDはアクネ菌を抑制し、皮脂バランスを整える。
3種の光がもたらす、これまでにないシャワー体験。さらに散水域をしぼって水密度を高めることで省エネを実現し、電源も電池も不要。水流そのものが発電するしくみは、ランニングコストゼロという新しい価値を生みだしました。
しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。
開発を率いた翁坂耕二常務取締役は、当時をこう振り返ります。
「これまでの経験や技術がまったく通用しなかったんです」
電気の専門知識を求めて研究機関を訪ね歩き、水の流し方、回転数、効率など、あらゆる条件をイチから検証し、プロペラの形状を何度もつくりなおす。成果の見えないトライ&エラーが果てしなく続きました。
突破口となったのは、流水の圧力エネルギーで回転する「フランシス水車」。その原理に着想を得たことで、水の力を最大限に引きだす構造が見えてきたのです。試行錯誤の先に、ようやく「水で電気を生む」技術がカタチになりました。そして—— 水と光、技術と美の融合から生まれた「linno BEAU」は、ついに世に送りだされました。
毎日のシャワーを、ただの習慣から、未来を変える体験へ。
その一歩は、水の流れのなかからはじまったのです。


発電技術をどう役立てるか。
コロナ禍で至った答え。
「linno BEAU」の誕生はひとつの“到達点”であると同時に、新たな可能性の扉が開いた瞬間でもありました。
水の流れから電気を生みだす。その技術がたしかに機能し、人の暮らしを変えうることを、わたしたちはこのプロダクトで実感したのです。
この発電技術はシャワーだけにとどまるものなのか。もっと小さく、もっと自由に、暮らしのさまざまな場面に応用できるのではないか。そう考えたわたしたちは、水力発電装置の小型化に着手。
同時に、みずからに問いかけました。
発電するシャワーヘッドで、つぎはなにを実現すべきか ——
その問いに、社会が静かに答えを投げかけてきました。
2019年ごろから世界を覆った新型コロナウイルス感染症。自宅で過ごす時間が増え、暮らしのなかでも「抗菌」「殺菌」への意識がこれまで以上に求められるようになったのです。
わたしたちは考えました。
発電した電気を、ただ光に変えるのではなく、水そのものの価値を高めることはできないだろうか。
たどりついた答えが、水を分解し、銀イオン(Ag+)を発生させるという発想でした。
Ag+には、抗菌効果があるとされています。もし、毎日の入浴や掃除に使う水そのものに、目に見えない「清潔」を宿すことができたなら。食中毒や皮膚疾患の原因菌とされる黄色ブドウ球菌、臭いの原因となるモラクセラ菌、そして厄介な黒カビの発生を抑えることができるかもしれない。
こうして、発電技術に新たな使命を与える挑戦がはじまりました。
暮らしを照らす光から、暮らしを守る水へ。
Ag+を発生させるシャワーヘッド「Ag+シャワー」の開発は、社会の変化に応えるための、つぎなる一歩として動きだしたのです。
抗菌効果比較試験


暮らしを守る、
水力発電装置の小型化に成功。
独自の技術によって小型化に成功した水力発電装置は、ついに「Ag+シャワー」というカタチで、ひとつの答えにたどりつきました。
シャワーの水が流れる。そのあたりまえの動きから生まれる電気が、銀イオンを生みだす。電源もコードも不要。水の力だけで、浴室に“清潔”を届けるしくみです。その中心にあるのが、シャワーヘッド内部に備えられた2枚の純銀プレート。水と電気がその間を通ることで、銀は電気分解され、目に見えないAg+となって水に溶けこんでいきます。
役目を果たした純銀プレートは、やがて少しずつ消耗していきます。しかし、交換のタイミングはLEDランプが静かに知らせてくれる。取り替えも簡単で、さらにスイッチひとつで電気分解のオン/オフを切り替えることができるので、必要なときだけAg+を発生させ、無駄な消耗を抑えることも可能です。
水の力を、無駄なく、賢く使う。
その思想は、多くのみなさんにも伝わりました。発売に先がけて実施したクラウドファンディングでは、この新しいシャワーのあり方に共感した約70名の賛同を獲得。「Ag+シャワー」は、暮らしを守る技術として、たしかな一歩を踏みだしたのです。
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発電のしくみ
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Ag+発電のしくみ
発電装置の小型化に成功し、
Ag+シャワーが完成。

クラウドファンディングによる支援を受けて完成した「Ag+シャワー」は、感謝の気持ちとともに、まずは応援者のもとに届けられました。しかし、そこで寄せられた声は、開発チームにとって思いがけないものでした。
スイッチ部分で、Ag+の発生を知らせるランプが点灯しない ——
原因を探るため、徹底した検証がはじまりました。
コードの配線、そして防水性を高めるために施した樹脂によるポッティング加工の方法。調べていくほどに、いくつもの課題が浮かびあがってきました。
「回路設計を見直し、いまはスイッチ部分の改良に取り組んでいます」
そう語る翁坂常務の言葉には、前を向く強さがにじみます。
改良の過程で、もうひとつ大切な気づきがありました。それは、自社の技術が十分でない領域があるという事実。すべてを抱えこむのではなく、さらなる安全性を求め、スイッチの製造は電子機器の企画を行うメーカーに委託する判断をくだしました。結果として、「Ag+シャワー」はよりたしかな完成度へと近づいていったのです。
「失敗したときは、課題が山積みで途方にくれました。でも、その経験があったからこそ、完成度を高められると感じています。トライ&エラーの先にある達成感こそが、モノづくりの醍醐味なんだと思います」
そう語る翁坂常務の表情にはおだやかな笑顔が浮かびます。
現在、「Ag+シャワー」は完成にむけた最終段階へ。
幾度もの試行錯誤を乗り越えたその先で、満を持しての発売のときを、静かに待っています。